「最強寒波」と報じられてから数週間、節分を過ぎても厳しい冷え込みが続きます。銀座でも何年かぶりの雪景色に、通勤の足も乱れがちとなりました。
そんな寒さの中思い出したのは、母や祖母が冬になると着物の下にたくさん重ね着をして、暖房設備もない寒さをしのいでいたこと。
皆様もお出かけの機会には、思い切って着物をお召しになってみてください。首元、手首、足首さえ防寒すれば、着物は本当に暖かく快適なんですよ。
さて、そんな寒波襲来の1/14に銀座いち利心斎橋店にて、そしてつい先日の2/4には本店にて、「きもの知恵袋」コラムの実践講座を開催いたしました。
今回は、初回となった心斎橋店のイベント内容を詳しくご紹介したいと思います♪
(本店の様子は、来月ご紹介の予定です。もう少しお待ちくださいませ)
さて、お天気を案じながら前夜大阪に到着いたしましたが、当日の朝は青空が見え、気温もやや上昇したようでほっとひと安心。
心斎橋店には、約1年ぶりの入店です。写真映えを考えて、明るい紫とアイボリーの絵羽紬を着ました。いかがですか?
この日は午前と午後の2回講座があり、ランチは両方のご参加者20名様以上が集合というスケジュールでした。
お着物でのご参加は「できれば」というお願いだったのですが、始まってみれば寒い中にも関わらず、皆様全員が、美しいお着物姿でお集まりくださいました!こちらは全員での記念撮影です。壮観でしょう!思い思いのお洒落がとっても素敵です。
講座は、前回1月のコラムの内容を踏まえて、着物の仕度と始末、そして補正のポイントという内容です。着用前日には着物をハンガーに掛けてチェック、着付け前には手をしっかり洗って、準備にはプラス10分のゆとりを…基本的なことですが、皆様熱心にお聞きくださいました。
こちらは、着用後の始末です。脱いだら帯は手のしでしわを伸ばし、着物にはブラシをかけます。後ろの方にご覧いただけるようハンガーに掛けていますが、下ろしてお膝の上でかけていただいてもかまいません。
ブラシは、静電気除去効果のあるきもの専用のものを使っています。
衿や胸元、袖口、裾など汚れやすいところはていねいに。シミ汚れのチェックも同時に行います。
湿気を飛ばすときには10cmほど床に付くように掛けたり、椅子を台にしたり、とにかく着物を宙吊りにしないこと!裏地が袋になる原因になってしまうんですよ。床に付けるときにはシワにならないようにきれいに伸ばして、汚れないよう衣装敷などを敷きましょう。
ちょっとした気配りでお手入れや修繕費用を節約することができますよ。
こちらはたたみ方のコツです。
背中と袖の段差や、衿元のしわを作らないよう、ポイントに紙をはさむたたみ方をご紹介しています。紙は湿気を呼びますので着用頻度の少ない着物には不向きですが、よくお召しになるものや持ち運びのときは便利です。
袋帯は、半分の半分に折ったたれ先から3枚目がお太鼓になります。金銀の糸は折りあとが付くとなかなか消えません。たたんで持ち運ぶときも、中表に折らないように気をつけて。
補正のお話では、できるだけ何も足さずに美しい着姿を作るポイントを、ボディを使ってご説明しました。
衿芯も、薄いもの、厚いものと言葉だけではわかりにくいので、実物をご覧いただきました。しわのない美しい衿元を作るには、衿芯の調節が欠かせません。質疑応答を交えて、約90分強お話し、最後は午前、午後それぞれの回の方と記念撮影です。お昼は全員合同で、いち利心斎橋店のすぐ向かいにある「京懐石 美濃吉」へ。
広々した個室で、畳敷きに椅子席なのが好評でした。お食事はこちらの京弁当。たくさんのお品が二段のお重にきれいに盛り付けられ、女性に大人気というのもうなずけます。
着物好きの皆様ですから初対面でもお話はつきず、約90分のランチタイムもあっという間に過ぎてゆきました。お昼には皆様のお着物をゆっくり拝見することもでき、お一人お一人が、季節にちなんだお正月らしいコーディネート、十二支を描いた帯や、手刺繍の宝尽くしの帯、明るく華やかなお色、上品なよそゆきなど、こだわりのある素敵な装いでお集まりいただいたことに本当に感激いたしました。
皆様の装いを拝見すれば、今日この日をどんなに楽しみにしてくださっていたか伝わります。心を込めてお洒落してこのイベントにご参加くださった皆様のお心遣いが、どんなに嬉しかったことでしょう。
以前にも、「お相手のために、装いで心遣いを表現することが日本ならではの文化です」とお話いたしましたが、皆様からそれを実感させていただき、とてもあたたかく幸せな気持ちで帰路に着いたのでした。
そして、もう一つとても心に残りましたのが、質疑応答のときに「ずっとわからなくて聞きたかったことが聞けました!」と喜んでいただいたことです。
いつもそのお着物でおでかけされるたびに悩んでいらっしゃったのですね。
このコラムを始めましたのも、世代が代わるにつれて身近に着物のことを聞ける方がいない、自分で調べても何が正解なのかわからないとお困りのお声からでした。
それが本当にお役にたち、皆様に必要としていただいていることが嬉しく、私のほうが力をいただいた気持ちです。
考えてみれば、基本的なことこそ聞きにくいということもありますよね。いち利はこれからも、そんな率直な疑問やお悩みをご相談いただける場でありたいと思います。
また、このコラムも4年目を迎えて、これからどんな話題がいいかしら…と悩んでいた折でしたが、基本的なことをお伝えしつづけるのもひとつの役割かもしれない、着物歴が長いということで私でもお役にたてることがあるならば、これからも続けさせていただけるのかな、と迷いが晴れたようでした。
私たちは、着物と洋服が同じ「着るもの」としてつながり、ふだんの暮らしでの「着物」を伝えられる最後の世代かもしれません。このまま途切れてしまえば、着物は特別なときのもの、着付けも半衿付けもすべて業者さん任せという時代になってしまうでしょう(今もかなりそうですけれど…)。
私たちがお伝えした着物のことを、皆様がまた次の世代へとつないでくだされば、着物はもっと身近で楽しいものとなってゆくに違いありません。
そんなわけで、福岡天神店のイベントもますます楽しみな今日このごろです。ご質問も募集しております。お近くの方は、ぜひお気軽に遊びにいらしてくださいね。
「銀座の女将 きもの知恵袋」実践講座 福岡天神店の開催日程は下記のとおりです。
3/11(日) 福岡天神店(2月下旬より募集開始予定)
※コーディネートに使用したアイテムは、SOLD OUT、及び販売終了の場合がございます。ご了承ください。