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2017年9月掲載知って損なし!着物の「柄」 後編
~形×素材×柄で決まる着物の「格」~


9月を迎えて急に朝晩はひんやりと、初秋の気配が漂ってまいりました。いよいよ着物シーズンの到来です。
秋は菊や紅葉見物、お茶会、お芝居や博物館・美術館の特別展など行事はもちろん、お祝いやお集まりも多くて、コーディネートを考えるのもわくわくしますね。

最近は、お呼ばれやちょっと大切なお集まりの席でも、いつもより少しあらたまったくらいの装いが好まれるようです。周りから浮いたり、大げさに見られたくないと思われるのですね。でも、この「いつもより少し」という加減は、むしろ正装より難しい!お手元の着物と帯を合わせて、「この組み合わせでいいのかしら」と悩んでしまいますよね。

今回は、先月に続き「柄」のお話です。呉服店で「この柄は格が高いですよ」とさらっと言われてよくわからなかったこと、ありませんか?
柄の「格」を知れば「きちんと感」の演出もお手のもの。少しお勉強的な内容になりますが、お付き合いくださいませ。

まず、格の高い柄として代表的なものをご紹介しましょう。

・「正倉院文様」
奈良の正倉院の御物などに使われている柄です。斜め格子に鹿の「有栖川」、牡丹と兎の「花兎」、麒麟や鳳凰など伝説の生き物、子孫繁栄を願う「葡萄唐草」などペルシャやインド、唐から伝わったものが多く、重厚な雰囲気があります。

・「有職文様」
唐から伝わった文様をシンプルに図案化したもので、平安時代の貴族の装束として流行しました。亀甲、菱、七宝など、現在もなじみのある日本の伝統文様です。

・「御所解文様」
几帳、御所車など平安貴族の調度品を描いた柄です。女性の幸福を表す意味もあり、振袖や訪問着の柄によく見られます。

・「吉祥文様・古典文様」
宝尽くしや松、鶴などお目出度い柄を吉祥文様と呼びます。そのほか、源氏香や雪輪、四季花なども総称して古典文様と呼ばれます。

現在格が高いとされるのは、奈良・平安の宮中や寺社で用いられたものが大半です。その時代には繊細な柄を染色で描く技術はありませんから、全て織で描き出され、庶民には全く手の届かない宝物でした。現代も、これらの柄を重厚な織で表現した袋帯は、礼装の定番となっています。

控えめで愛らしい古典柄は、よそゆきから普段着まで幅広く用いられます。
源氏香や雪輪、菊や桜など日本の花は、気軽な紬や名古屋帯にあしらわれていてもどこか上品で奥ゆかしい雰囲気をかもし出します。

ほかにも着物や帯には辞典一冊分ほどたくさんの柄がありますが、時代が古いもの、身分の高い方が用いたものほど格が高いというのがひとつの目安です。
また、同じ柄であれば染めよりも織で表現されたものが格上となります。

さて、ここで疑問がわきませんか?
「着物には留袖、訪問着、小紋…、帯は袋帯、名古屋帯という格があるのに、さらに柄にも格があるの?じゃあ、小紋に格の高い柄が付いていたらどうなるの??」
そうなのです。
着物や帯の「格」は、形だけ、柄だけでは決められず、いろいろな要素が入り混じっているのです。

訪問着でも、縞をメインにした個性的な柄ならパーティー向きで、式服にはそぐわないでしょう。帯も袋帯が全て礼装になるわけではなく、紬の生地に葡萄唐草を染めで表した袋帯なら「洒落袋」というカジュアル用になります。
TPOに合った装いを選ぶには、まず形と生地、そして柄をトータルに見ることが必要なのです。

ややこしいですけれど、お洒落でお召しになるなら、そんなに難しく考えずにお好きな組み合わせを楽しめばよいと思います。
ただ、決まりごとのあるお茶席やお式ごとの場合は、判断に迷う着物や帯は避けるか、先輩や先生にご相談なさるのが無難でしょう。
特に皆様を悩ませるのは「帯」。洒落袋もあれば金糸の名古屋帯もありと様々で、迷ってしまう方が多いのです。

たとえば「金銀の八寸名古屋帯」というものがあります。金銀だから訪問着にもよし、八寸だから普段にも使える万能品といわれ、40~50年前にはお嫁入り支度の定番でした。もしかしたら皆様のお手元にもおありかもしれませんね。
けれど実際にはどちらつかずで使いにくく、今ではリサイクル店にたくさん並んでいます。この帯に限りませんが、リサイクル品をお求めになるときには、なぜ手放されたのか理由を考えてみるとお買物の失敗を防げるかもしれません。

さて、最近の傾向としては、格の高い柄を銀や白系で品よく表現した袋帯が多く出ています。
現代の私たちの着物ライフでは、重々しい礼装よりも、程よいフォーマル感や上品さ、そして着回し力が求められています。
シンプルな御召や色無地にすっきりした袋帯…でも柄はきちんと格の高いものだったら、さりげなくお祝いや礼を尽くす気持ちを表現できますね。
飛び柄小紋も遊びの柄なら普段着ですが、源氏香や雪輪なら染めの名古屋帯で街着に、上品な袋帯で入卒式にと着回せます。
柄の格を知って、フォーマル感の足し算引き算ができれば、着物コーデも上級者。着物って本当に楽しい!と、洋服にはない醍醐味を感じられることでしょう。

もちろん最初からうまくはいきませんから、まずは着物や帯を数多く見てみること。身近な着物の先輩やお友達に何でも訊ねてみること。
できれば、着物姿の方がたくさん集まる場に出かけて、「素敵な着こなしだわ!」と思う方といろんなお話をしたり、アドバイスをしあえたり…そんなお友達ができたらいいですね。

いち利では、毎月「きものでおでかけ」というイベントを開催しています。
着物を着る機会をご提案するだけでなく、年齢も家庭環境も全く違う方たちが着物を通してつながり、共感し、同じ楽しみを分かち合う場をご提供したいと願っています。
意外とお一人でのご参加も多いですし、着物という共通点がありますから初対面でも話題はつきません。

柄の「格」のお話から思わぬ方向へ脱線したようですが、柄や格など難しいこともクリアして、自信をもってコーディネートを楽しめるようになるには、よき「着物仲間」と出会うこと。実はこれが最大で最短の近道なんですよ。