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2017年10月掲載「丸洗い」と「汚れ落とし」はどう違う?
着物のお手入れ“イロハ”をおさらい!


10月を迎え、いつの間にか日暮れがずいぶん早くなりました。あんなに厳しかった残暑もどこへやら。そろそろ単衣も御役御免で、お手入れをして次の出番を待つこととなります。

着物や帯の「お手入れ」というと、この頃は「丸洗い」が一般的になりました。
いち利でも、季節の変わり目にはたくさん丸洗いのお着物をお預かりいたしますが、「一回着ただけでも洗いたい!」という方がいらっしゃる一方で、長い間大事にしまい込みすぎて汚れが変色してしまったというケースも。「美しい状態を保ちたい」「経済的に済ませたい」どちらも私たち共通の願いですが、加減を間違えれば残念な結果ともなり、頭の痛いところです。
これまでも、着物のお手入れについては折に触れご紹介してまいりましたが、今回はお手入れの基本をご一緒におさらいいたしましょう。

さて、まず着物の「丸洗い」ってなんでしょう?
「生き洗い」と呼ばれることもあり、着物を解かずに、石油系の溶剤の中でぐるぐると回して洗います。お洋服のドライクリーニングと同じで、比較的安価に全体の汚れをざっと落とすことができます。
丸洗いは、その方法からもわかるとおり、わりあい新しいものです。では、もっと昔にはどうしていたのでしょう。

着物が日常着だった頃は、お手入れは家庭の主婦の仕事でした。
少々の汚れはベンジンなどで拭き取り、繰り返し着て全体が汚れたり古びたり、寸法が合わなくなったら解いて反物に戻し水洗いする「洗い張り」をします。そして、きれいになった反物をまた仕立て直すのです。
私が幼い頃には家に長い板があって、祖母が洗い終わった着物の生地をぴんと張り渡していました。母はもう、洗い張りや縫い直しはしていませんでしたが、それでも悉皆屋さんは各町内に1軒必ずあって、洗い張りからちょっとした汚れ落とし、繕いものまでなんでも引き受けていました。
時代の変化とともに、日常生活で着物を着る回数が減り、家庭で和裁をしなくなり、悉皆屋さんも町から消えてしまい…着物を解かずに洗える丸洗いが広まっていったのです。

そんなわけで、丸洗いは手軽で便利なお手入れ方法として重宝されています。けれども、けして万能ではありません。衿のファンデーションやお食事のシミなど、丸洗いだけでは落としきれない汚れもありますし、着物全体を溶剤に漬けるため、どうしても生地に負担がかってしまいます。

着物のお手入れの基本は、汚れた箇所の「シミ抜き」「汚れ落とし」です。
「シミ抜き」は、お食事や泥はねなど、汚れの種類に合う薬品を使ってきれいにします。「汚れ落とし」は、袖口や裾など、皮脂や埃が混じって黒ずんだ部分を薬品とブラシ、霧吹きの水を使ってきれいに洗います。みるみるうちに黒ずみが落ちてさっぱりするのは、本当に気持ちのいいものです。
ちなみにいち利では、アフターケアの無料サービスとして丸洗いではなくシミ抜き、汚れ落としをご用意していますが、そのほうが着物を傷めずに長い間美しく保てるからなのです。

長年の着物通の方や先生方は、着物を汚さない着方や所作、そして脱いだあとの小まめなお手入れが身についていらっしゃいます。中には「丸洗いはほとんどしない」とおっしゃる方もいらっしゃるんですよ。
「小まめなお手入れ」といっても、着るたびにシミ抜きに出すわけでありません。
脱いだ着物は、着用したのと同じくらいの時間を目安に陰干しして湿気を飛ばします。雨の日など湿気の多いときは、エアコンで除湿をしながら干すといいですよ。
湿気が抜けたら、衿や胸元、袖、裾など汚れやすい部分をチェックしながら、専用ブラシなどで全体の埃をさっと落とします。汗汚れやシミなどは、余程ひどいものでなければシーズン終わりにシミ抜きに出します。
着付けや動作に少し気を配るだけでも、汚れの程度はだいぶ変わってきます。いつも衿元が汚れてしまう方は、衿を少し首から離してゆったり合わせ、隣の方とお話したり何かを見たりするとき、顔だけでなく体ごと向けるよう気をつけてみてください。

お手入れに出す頻度は、1シーズンに1回が目安です。ほとんど着ていないものは次のシーズンまでしまっておいてもよいのですが、もし汗汚れやシミがあった場合、一年もたつと変色するおそれがあります。次の着用まで間があきそうなものは、しまう前にプロにチェックしてもらいましょう。点検だけなら費用はかかりませんからご安心を!

カジュアルな着方や、気軽に着物を楽しむことには私も大賛成なのですが、一方で昔ながらの「着物の始末」ということも大切にしたいと思います。
肌着や長襦袢を重ね着するのは窮屈かもしれませんが、きちんと意味があります。絹の長襦袢は、静電気を抑えて埃を吸い込みにくくしてくれますし、肌着や裾よけには、皮脂や汗が着物に直接付くのを防ぐという大切な役割があります。
着物をハンガーに掛けたままにせずきちんとたたむのは、生地が伸びて袋になるのを防ぐためだけではありません。「折り目正しい」という言葉のとおり、脇線や肩山などにしゃきっと通った折り目は、美しい着物姿に欠かせないものなのです。

新しい着物一枚を誂えるというのは、今も昔も気軽なことではありません。汚さないように丁寧に着て、脱いだら始末をし、汚れが目立ってきたら洗い張りをしてまた仕立て直す…大切にお手入れしながら着ることで、着物の寿命は何十年にもなります。心を込めて扱えば、必ず結果は目に見えるものです。
反対に、どんなに高価で素晴らしい着物でも、汚れてしまえばその値打ちは激減します。目立つところにシミ汚れがあったり色あせたりしていれば、それはもう「美しく装うもの」という意味での着物とはいえないのではないでしょうか。

からりと心地よい秋晴れの一日は、着物の整頓にはうってつけです。夏・単衣ものは「お疲れ様」の気持ちで。袷の着物はおでかけの予定を考えながら点検してみましょう。面倒ごとではありますが、これも楽しい季節の変わり目の着物仕度です。
寸法の合わないものやほつれたもの、派手な裾回しなど、直せばまだまだ活躍するものもみつかるかもしれませんね。

10月恒例のイベント、いち利の「きものクリニック」には、仕立てやリメイクの専門職人がスタンバイしております。シミ抜きは、「ここで落とせなかったら、他のどの業者でも無理だ」といわれるほど、京都でもピカイチの職人さんにお願いしています。ご相談だけでも大歓迎!の優しい職人さんばかりですので、どうぞお気軽においでくださいね。

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