
日ごとに暖かくなり、お出かけに羽織るものも軽やかになってまいりました。今回は着姿の胸元の印象を左右する「帯揚げ」について、少しお話しさせていただきますね。
着物を始めたばかりの頃は、催事のワゴンなどで売られている千円、二千円といったお手頃な帯揚げに手が伸びるものです。いろいろな色を揃えたいというお気持ち、本当によく分かります。
でも実は「初心者の方こそ、少し良い生地の帯揚げを選んでいただきたい」というのが、私の本音なのです。
お安いものはどうしても生地が薄く、結ぶとすぐにシワになってしまったり、ふっくらとした形が作りにくかったりします。まだ手が慣れていない時期に生地にまで苦労させられると、着付けがちょっぴり嫌になってしまうかもしれません。厚みがあり、弾力のあるしっかりした生地感のものを選べば、驚くほど楽に、そして綺麗に胸元が整うようになりますよ。
また、「この鳥の柄が可愛いから」と一目惚れして買ったのに、いざ結んでみたら柄が全部帯の中に隠れてしまった……なんて経験はありませんか?
帯揚げというのは、広げた時の華やかさと、結んで見える部分が意外と違うものなのです。特に、布の両端にだけ綺麗な色や柄があるタイプは要注意です。そのまま結ぶと、肝心の好きな色が脇の方へ隠れてしまい、胸元には地味な真ん中の色しか出てこないことがあります。
そんな時は、ちょっとした手仕事を加えてみてください。ご自分の帯の幅(だいたい30cmから31cmほど)を計算して、見せたい色や柄がちょうど胸元に来るように、帯に隠れる真ん中の部分をあらかじめ縫い込んで調整してしまうのです。こうすれば、どんなお気に入りの柄も、思い通りの場所にピタリと収まってくれますよ。
帯揚げのおしゃれの楽しみ方は、既製品だけではありません。お気に入りのストールを帯揚げ代わりにしたり、長襦袢を仕立てた時の余り布を活用したりするのも素敵です。例えば、単衣の長襦袢を仕立てると、お袖の分などで2メートル近い布が余ることがあります。これをお揃いの帯揚げに仕立てれば、袖口からチラリと覗く長襦袢と胸元の帯揚げがリンクして、通な「お揃いのおしゃれ」が楽しめます。
私が好きな帯揚げに「輪出し(りんだし)」があるのですが、職人さんのこだわりが詰まったの絞りが、素敵ですよね。5つ、7つなど入っている数は違っても、帯の脇にちょうど絞りの柄がくるように、計算し尽くされて作られているのです。脇からチラリと見えるその色気、作り手の「女心をくすぐる」配慮には、いつも感動してしまいます。
フォーマルな場では周囲に溶け込むような無難な色選びも大切ですが、カジュアルなおしゃれは、ご自分のセンスで自由に楽しむためのものです。帯揚げ一枚で、その日の気分も着姿の格調もガラリと変わります。好きな色柄で綺麗に整うと、気分があがります。生地の感触を楽しみながら、あなたらしい胸元の彩りを見つけてみてくださいね