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2019年10月掲載大人のマナーと心遣いを表現する
「色喪服」をご存知ですか?


「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、いつのまにか朝晩はひんやりと、季節が夏物のしまいどきを教えてくれているようです。照りつける日差しに何もかもが色鮮やかな夏と異なり、秋の空や景色はどこか煙るようで、おだやかさと懐かしさを感じさせます。人生でも後半にかかる頃を「白秋」と呼びますね。年齢を重ねて人生の風景が変わってくることを季節に託した、素敵な言葉だと思います。

先日から色無地のご相談を承ることが続き、人生の折節と着物揃えについて改めて考えさせられる機会がありました。
ある方は、息子さんが結婚されたら法事などお集まりの機会が急に増えたのだそうです。ご家族が増えるのですから当然といえば当然ですし、お付き合いの多いお土地柄などであれば尚更です。そんなときこそ着物を着たいけれど、手持ちの色無地はお嫁入り道具のピンク色。法事でなくてもこのピンクはもう着られないわ…とご相談にみえたというわけです。

「どうしてこんな派手なピンクにしたのかしら。もっとシックな色なら今も着られたのに」と困り顔でいらっしゃいましたが、とんでもない!ご結婚されて、これからお宮参りや入卒式、周囲の方のご結婚と、人生でもひときわ明るくおめでたいことが続く時期。それを四季になぞらえると「朱夏」と呼びます。華やかで充実した壮年期の色はまさに「朱」。ピンクやオレンジの着物が、ご年齢にも着用シーンにも似つかわしいというものです。
その着物が派手になり着られなくなる、それは人生という季節の変化に他なりません。華やかな色はその役目を終え、不祝儀や真面目なお席の色が必要な時期が来たということなのです。

こんな色無地を「色喪服」といいますが、どんなものかいま一つわからないという方も多いようです。先の方も「お祝い事のことはいろいろ書かれているけれど、不祝儀についてはあまり情報がないんですね」とおっしゃっていました。おめでたいことに比べてデリケートなテーマで地域性もあるからでしょうか。けれど、人生では避けて通れないことのひとつでもありますし、今回は冠婚葬祭の「葬祭」の着物、色喪服についてご紹介したいと思います。

和服の喪服といえば「黒喪服」を指します。正確には「黒喪服一式」、つまり黒い紋付の着物、黒い帯、黒い帯〆帯揚、黒い草履の一揃いが、一番正式な喪服になります。これはご着用の機会がうんと限られます。地域差もありますが、一般的に喪主以外が黒喪服を着用するのは告別式のみで、それ以外の通夜や初七日、一周忌などの法事は色喪服でよいとされます。最近では告別式であっても着物の喪服はご家族がお召しになることが多いようです。(ご血縁でないのに黒喪服の着物姿の方は「故人とさぞ近しいご関係?」と邪推されることも…)

色喪服は「略喪服」とも呼ばれ、グレー、紺、紫などの「喪色」が一般的ですが、深緑、臙脂、茶系などの控えめな色全般も含まれます。迷ったら「黒の中で浮かない色」と考えるとよいでしょう。
「葬祭」に使えば「色喪服」ですが、要は一つ紋の色無地ですから、「冠婚」やお茶席などにももちろん着用できます。以前は、色喪服には無地でつや感の無い縮緬地と言われましたが、最近はそこまで限定せずに雲や唐草、幾何学模様などの地紋も、おめでたい柄をさければOKとされます。江戸小紋でも鮫、角通し、行儀の三役など控えめな柄は色喪服の代用になります。
お嫁入りのときの色無地を染め替える場合は要注意。生地が光沢の強い綸子で大柄の地紋ですと若向き、お祝い向きになり、いくら濃い色に染めても地味に見えないのです。

合わせる帯によっても喪の度合いが変わり、通夜や初七日であれば黒喪服の帯、一周忌や三回忌などの法事や追悼式ならグレーや黒っぽい無地感の織帯と言われます。適当なものがなければリバーシブル帯の裏でも大丈夫。絶対使わないと思った地味な裏面が実は色喪服にぴったりということもあるので、まずはお手持ちを探してみてください。昔は家に金銀の入っていないグレー系の「法事用つづれ帯」というのがありました。「つづれは三代つづく」と言いますが、頻繁に使うものではないからこそ良いものを1本用意して母から娘へ大事に受け継いでいたのでしょう。
帯結びは一重太鼓で、悲しみが重ならないようにという気持ちを表します。
半衿と足袋は白無地。帯〆帯揚、草履はグレーで余計な色が入っていないシンプルなものが便利です。

不祝儀の場合、重要なのはご用意のタイミングです。お身内がご不調のときに誂えてはいけないというのは、耳にしたことがおありでしょう。私自身、結婚してまもない頃、ふと立ち寄ったデパートでセール品の喪服用草履バッグセットを購入した、その1週間後に入院中の祖母が急逝し、母に叱られたことがあります。昔から、喪服一式は何か一つ足りないようにしておくといわれ、私のお嫁入り道具にも草履バッグが無いから何の気なしに買っただけなのにと、そのときは母の言葉を理不尽に感じました。けれど、自分も年をとってみると、母の気持ちもだんだん分かってきました。
悲しみの中にいるとき、人は誰しもそのはけ口を求め、何かのせいにしたくなるものです。しかも、心がとても敏感になっているときに不用意な言動に出会えば、傷つき腹が立つのは無理のないこと。お祝い事よりも弔事の際こそ一層細やかな心配りが必要です。昔から、喪服は晴れ着と合わせて支度したり、お彼岸に合わせて仕立てるなどと言われるのは、思わぬきっかけにならないようにという配慮からなのです。

一式セットで誂える黒喪服と異なり、色喪服なら少しずつ買い足していけます。不祝儀は予定ができるものではないだけに、折々心がけておかれるとよいですね。作っておけば、普段のおでかけやお稽古事にも活用できます。単衣や夏物を黒喪服で一式揃えるのは大変ですが、色無地なら着用機会もあり無駄になりません。ただ、年上のご親戚や先輩、お友達には「色喪服にもできるから買ったのよ」なんて口に出さないようにご注意を!

家族や世の中のあり方とともに冠婚葬祭も変化している昨今、お別れのかたちもますます多様化していくのかもしれません。ただ、どんなに時代が変わっても、大切な場面でお相手を尊重するマナーが求められることは変わりません。何かの折にはふさわしい装いができるというのも、ある程度の年齢になられたら必要なたしなみといえるでしょう。黒喪服でご葬儀という大きな節目ではないときこそ、きちんと感や品格を表現できる「色喪服」。大人の一枚としておすすめいたします。

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