今年の夏は、東京でも大阪でも猛暑日の連続でしたね。
そろそろ夏の疲れもピークという頃ですが、皆様ご体調はいかがですか?
もう着物を着る体力も無いわ~なんていう方もいらっしゃるでしょうか。
お盆を過ぎていくらか過ごしやすくなったとはいえ、まだまだ9月下旬まで残暑が続きます。
春秋両方にいえることですけれど、温暖化に伴って衣替えの時期は全体的にずれ込んできています。
有名な着物雑誌を見ても、9月下旬までは絽や紗をコーディネートしているほど。秋分から10月に入ってしばらくが、単衣の時期になっているようですね。
目安となる気温は30度くらいでしょうか。
日中30度をこえる暑さなら、夏物でかまわないという時流になりつつあります。もちろんTPOの範囲ではありますけれど。
さて、私自身は、9月に何を着ましょうか。
お店で皆様をお迎えする立場ですから、あまりいつまでも夏物は着られません。
まず、暑さは長襦袢を涼しい素材や洗えるものにするなどで調節します。長襦袢や肌着などは、汗が気になる間は夏物でもOKですから。
最近は、リーズナブルで上質な麻の襦袢地が出ていますね。昔のようにパリパリごわごわせず、洗えば綿かと思うようなやわらかさです。
いち利でもこの夏はなめらかな小千谷麻の襦袢地が大人気でした。産地でも生産数が少なく、毎年売り切れて追加入荷無しとなってしまうものです。今年は白だけでなく、緑や藤など淡い上品なカラーが入荷したのも喜ばれました。
真っ白ではいかにも夏物という感じですけれど、色みがあれば単衣の時期にも違和感なく着られます。
私の希望としては、淡い色ばかりでなく洒落感のある濃い色目のものがあるとうれしいですね。いち利のバイヤーがオリジナルで作ってくれないかしら…なんて。
9月に出番の多い着物は、さらりとした着心地の本塩沢です。紬が好きですから、基本的には紬の単衣がコーディネートの中心になります。
ですが、ここぞというときは、小紋など染めの着物をきちんと着付けます。
紬は軽くしわになりにくくて普段には楽なのですけれど、スリムに見せたいと思ったらやはり落ち感のあるやわらかものが一番!もちろん補正をきちんとする、着崩れをまめにケアするなどは必要ですが、手間の分美しく見えること請け合いなのです。
これは、袷にも言えることですので「体系別・きれいに見える生地の選び方」はまた改めてお話しいたしますね。
9月の着物は「秋単衣」といわれます。
以前は「春単衣」は白っぽく薄手の着物、「秋単衣」は濃い色でしっかりした生地とされたものですが、最近はそんな使い分けもあまり聞かなくなったように思います。
春と秋にそれぞれの単衣を用意するよりも、同じ着物を小物などでアレンジして季節に合わせた着こなしを楽しむ方が増えているのでしょうね。
同じ白っぽい着物でも、帯揚帯〆を明るく透明感のある色にするか、こっくりと深みのある色にするかで印象は大きく変わります。まだ残暑の厳しい時期には、秋物だからといって急に黒っぽい着物を着るより、見た目に暑苦しくないのも好印象かもしれません。
人間の目というのは不思議なもので、日光や湿度、気温などで色の感じ方が全然違ってくるのですね。
夏には涼しげで爽やかに見えた色が、秋風とともに寒々しく寂しげに感じるというご経験は、皆様もおありなのじゃないかしら。
季節の移ろいとともに、そのときどきに心地よく感じたり美しく見える色を合わせるというのは、四季のある日本ならではの美意識なのじゃないかと思います。
そんなことを、着物で表現できたら素敵ですね。