新着記事

アーカイブ

メールマガジン・会員登録はこちらから

着物の「価値」は自分軸で決める の巻

星わにこ
2024/05/15 00:00
『その着物、どうする?』という本を書いたこともあってか、よく着物の処分については相談を受けます。先日、着物の処分に困っている人がいるんだけど、どこか買い取ってくれるいいところはありませんかという相談を受けました。私自身は、実は買取をしてもらったことはありません。差し上げたり寄付したりすることがほとんどで、どうしようもないものは古布回収に出しています。 ちょっと今回はしょんぼりな話になってしまうのですが、昭和ピープルは「着物は高価なもの」と思っています。確かに、買う時は高価ですが、昔と違ってみんなが着物を着るわけではなく、またファストファッション全盛の現代、売る時には値段がつかないと思ったほうが間違いありません。 最近の若い人は、流行の服を着るために購入するときに「リセールバリュー」を大事にする人が増えているそう。飽きたらメルカリなどで売って、また新しいものを購入する。そのとき、高く売れるものを選んだり、手入れもきちんとして、その洋服の価値が下がらないようにするんだそうです。物価がどんどん上がっている今、リサイクルの衣類も需要があるし、賢いですよね。 そういう観点で見てみると、着物は圧倒的に手放したい人は多いけど、欲しい人が超少ない市場です。リセールバリューは、ほぼないジャンルと言っていいでしょう。 だから買取業者さんも高くは買ってくれません。「えっ!買ったときはすごく高かったと聞いていたのに、買取金額はこれっぽっち?」ということがほとんどです。 そして、どこの家の箪笥にも入っている喪服や普段着のウール着物などは、買取もしてもらえません。寄付も断られることが多いです。中古の喪服やウール着物は数も多すぎて需要がないのです。あと、サイズが小さい着物や色柄が流行とかけ離れていたり状態が悪かったりしても難しいです。 だれかに差し上げるときも、同じです。欲しいという人のほうが圧倒的に少ないので、もし欲しいという人がいたら本当にラッキーだと思います。 買取のことを聞かれたときには「買取金額は期待しないで、持っていってもらえてだれか着る人のところに渡ればいいと思えれば」とお伝えしています。 「あんなに大事にしていたものなのに、価値がないの?」と悲しくなってしまう可能性があれば、もらってくれる人を探すか気持ちよく寄付するか、「もうこの着物のお役目は終わった」と思って、洋服と同じように処分する方法を考えてみるほうがよいでしょう。 着物に限らずものの価値は、自分軸で考えると楽になります。いくらいいものでも、自分にとって必要なければそれは不用品なのです。自分はいらないのに、「もったいない」「高く売れるかも」「何かに使えるかも」「思い出の品だから」と手放さないでいると、際限がありません。 自分が不要と思ったら、手放す勇気も必要です。そのときは、潔くさようならすると、意外とスッキリしますよ! 決められない!というときは、一人じゃなく、誰かと一緒にやるのがおすすめ。 着物じゃないですが、実家にある大量の昔の写真アルバムの処分を考えあぐねていましたが、先日実家の法事で集まった親戚にアルバムを見てもらい、とっておきたい写真だけはがしたりスマホで撮影したりして、それで供養としてあとは全部処分することにしました。思い出話に花が咲いたし、とってもすっきりしました。 といいつつ、昨日お友達の着物整理を手伝いにいって、いらないという着物をいただいてきたり、その帰りに古本屋さんで面白そうな本を買ってきてしまった私ですが(汗)、その時その時、自分に必要なものを手元に置いて、「自分が」不要になったら処分する、という暮らしが理想。……理想です。大事なことなので2回言いました……。 自分ができることは限られていて、活かせる範囲のものしか活かせない。手にあまるものを手放して、数を減らしたほうが一つ一つのものを大切にできる。残して死んだら全部ゴミだと思うと、自分で処理したほうがいいなとも思います。 着物も、そんな「もの」のひとつです。思い入れが強くなりがちですが、自分の気持ちと相談して、ただ無闇に「大事なもの」と思い込まず、自分が本当にそれを好きか、とっておきたいか、必要かどうかという視点が大事なのかもしれないなと思う今日この頃です。

帯揚げってやっぱり必要だった? の巻

星わにこ
2024/05/08 00:00
ゴールデンウイーク、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか? 私は前半仕事で中盤休み、後半また仕事でありました。中盤でしっかりと休めたのでかなり復活しました。人間お休みって大事ですよね。。。 4月末は仕事も含め着物の日が多かったのですが、なかなか気温が高い日が多く、もうずっと単衣でした。1日だけ、雨模様で涼しいかなと思ったのですが、湿気があったせいかもう滝汗。4月後半からは単衣しか勝たんと実感しました。 毎日着物を着ていると、ちょっとでも楽をしたいという気持ちが強くなってきます。ただでさえうそつき衿でらくちん着付けをしている私ですが、去年の夏に帯揚げをしなかったことが楽だったのに味をしめて、2日ほど連続で帯揚げをしないで名古屋帯で出かけてみました。 関連記事:夏は帯揚げなくてもいいのかも……の巻 帯揚げは、もともと江戸末期にお太鼓結びができたときに、帯枕を隠す装飾として発生したものと言われています。銀座結びなどをするときに、山をキープする役割を果たしたりもしますが(これも帯枕や仮紐を使う場合もあり)基本、飾りであり、これがないと着物が着られないというパーツではありません。とはいいつつ、帯枕をくるんだ白いガーゼや紐は見せたくない!ための必需品でした。 でも、たかはしきもの工房の帯枕、空芯才crowは帯枕と枕紐がドッキングしていて、さらに色がチャコールグレーで、たとえ脇から見えたとしても「枕紐が見えちゃってる~!」というかんじにはなりません。 なので、帯揚げを省略しておでかけをしてもわからないってコト。なにしろ、帯揚げをしないとなると、着付け時間がゆうに2,3分は短縮できますからね!! そして、胴に巻く布が1枚減るわけなので、涼しいです。 着付けに使う紐は1本でも減らした方が楽、と常々思っているのでこれはいいやとばかりに、伊達締めもしなーい、帯揚げもしなーい、らくちーん!とご満悦だったのですが‥‥‥ 上半身が着崩れがちになってしまったのです。 やっぱり、減らしすぎると、だめなのかも‥‥。 ウールや木綿などあまりすべらない普段着だといいかもしれませんが、やわらかものや、滑りやすいセオアルファなどはどうしても布がすべって動いてしまいます。また、袷だとある程度落ち着きますが、単衣だと着崩れしやすいようです。 あきらめて(?)帯揚げをしてみると、帯の上部の空間がうまく埋まって、いい緩衝材というかストッパーにもなって、着物の上半身を安定させているんだな~と改めて感じました。ただの飾りだけじゃなかった。 でも、しなければやはり楽なので(まだ言ってる)、おしゃれより楽を優先したいときは、伊達締めは省略しないで帯揚げ省略とか、工夫をして帯揚げなし着付けを研究してみたいです。別に帯揚げが嫌いなわけじゃないんですけどね! これからどんどん蒸し蒸し暑くなる一方ですから、普段着物を楽に綺麗に着る方法を実験してまたお伝えできればなと思っております。皆様もこれいいよ!な工夫かありましたら、教えてくださいね!