2017年5月掲載

シーズン到来!女将の『木綿きもの』徹底ガイド


目に青葉の5月。「立夏」を境に陽射しの眩しさも夏らしく変わる気がします。
衣替えには早いものの気温は夏もかくやというこの季節、俄然注目を集めているのが「木綿きもの」です。
いち利モールにも先月には新柄が入り、カラフルな色柄はたくさんの商品の中でもひときわ目をひきます。しかも「一年中単衣で洗濯もOK」となれば、急に暑くなるこの時期にはとっても魅力的ですね。

とはいえ、いざ一枚と思うと皆様の頭にはたくさん「?」がわいてこられるようで…。
「○○木綿、とたくさん種類があるけれど、どう違うの?」
「夏は着られるの?」
「どんな場所に着ていけるの?」
いち利の店頭では、このところ日々そんなご質問をいただいています。
昨年12月に「木綿きもの」のお話をさせていただきましたが、今回は「徹底ガイド」ということで、少しでも皆様の疑問におこたえできればと思います。


まず木綿の種類は、大きくこんなふうにグループ分けするとわかりやすいですよ。

(1)「○○木綿」 産地の名前+木綿 → お手ごろなカジュアル木綿
伊勢木綿、遠州木綿、松阪木綿などは、それぞれの土地で庶民の普段着や地元の特産品として作られてきました。色柄はどれも仕事着向きに、汚れが目立たない縞や格子柄などシンプルなもの。糸や織り方に産地ごとの特徴があります。丈夫で扱いやすく手ごろなお値段が魅力。最近はお洒落な色柄もたくさん増えました。

(2)「○○絣」 産地の名前+絣 → ハイグレードな趣味の木綿
薩摩絣、久留米絣などはその名のとおり先染の糸で柄を織り出す「絣織」が特徴です。絹織物にひけをとらない精緻なものは、お値段もぐっとアップします。

(3)その他 産地の名前+生地の種類 → 特徴ある生地の木綿
阿波しじらが代表的です。阿波で作られた、しぼのある「しじら」という綿織物です。

いち利で主に扱っているのは、伊勢木綿、遠州木綿、片貝木綿、阿波しじらなどです。簡単にそれぞれの特徴をご紹介いたしましょう。

「伊勢木綿」 紡績して一本のままの糸「単糸」を使っており、やわらかくて肌触りよく、使い込むほど味わいが増していきます。単糸は切れやすいため、織りあげるには良い素材と高い技術力が必要です。現在、臼井織布株式会社が生産しています。

「片貝木綿」 戦後に柳宗悦の民衆工芸運動の指導のもと、新潟県小千谷市片貝町の紺屋「紺仁」が作り始めた比較的新しい木綿です。3種類の太さの縦糸を規則的に並べることで、紬のような風合いとさらっと心地よい肌当たりになります。

「遠州木綿」 古くから綿織物を生産し、優れた織機技術をもつ浜松で作られています。しっかりした地風とリーズナブルな価格で、普段着として親しまれてきました。「遠州縞プロジェクト」という生産者の取組みで、多彩なデザインが生まれています。

「阿波しじら」 独特のシボが美しく、さらっとした着心地の薄地の木綿です。現在、長尾織布合名会社が生産しています。

近年生産者が激減し、ほぼ一社だけという産地も少なくありません。しかし、各産地では木綿の魅力を守ろうと手に取りやすい価格を維持するとともに、今の女性の好みに合う明るく洒落た新柄を生み出しています。雑誌「七緒」の表紙にも、素敵な木綿がよく登場していますね。

さて、次にご着用の時期です。
伊勢、片貝、遠州など、どれも平織のしっかりした生地で、単衣仕立で通年着用可能です。ときどき「木綿の単衣なら夏も着られますか?」とおたずねいただきます。お召しになって間違いとは言えませんが、6〜8月にこれらの生地はかなり暑く感じることでしょう。
初夏〜真夏には阿波しじらがおすすめです。さらりと涼しく通気性の良い生地で、色柄も多彩です。透けすぎないので5月の暑い日などにもお召しいただけますよ。

最後に、おでかけのTPOについてですが…これはなかなか難しいですね。
江戸中期に庶民は絹物を禁じられ、日常には木綿や麻を着なさいと定められました。以来、木綿といえば実用的なイメージが定着していますから、現代でも木綿の着物でお食事やお芝居に行かれるのは抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。
しかし一方で、着物というだけで「ちゃんと着物を着ていてすごい!」ともなる昨今、木綿とはいえ普段着と言いきれない面もあります。

礼装に不向きなのはもちろんですが、お洒落の場でどこまでOKかは色柄と着る人次第となってしまいます。
ですので、あくまで私の感覚ですけれども、昔ながらの地味な縞や格子柄、民芸調の柄などは街歩きや気軽なお食事まででしょうか。帯や小物に気を使い、野暮ったくならないように合わせます。

正絹の紬のような、細かい格子や縞でも凝った感じの柄、生地に風合いを感じるものなら、お芝居やちょっといいレストラン、コンサートなども良いのではないでしょうか。
明るい色味で無地っぽいものを選べば、ぐっと垢抜けた感じになります。もしこれから木綿を一枚お選びになるなら、このタイプが着回しやすくおすすめです。

これからの季節なら、長襦袢もウォッシャブルな麻や爽竹を合わせます。カジュアルなおでかけなら、筒袖の半襦袢に裾除けやステテコでも十分でしょう。
半巾帯をアレンジ結びしたり、色柄の半衿や足袋など木綿だからこそぴたっと決まるコーディネートも楽しいものです。ちなみに私のおすすめは手ぬぐい半衿。正絹の着物には手ぬぐいのマットな質感がどうも合わないのですが、木綿だとしっくりなじんでとても可愛らしいのです。

現代のお洒落着としての木綿は、温暖化やナチュラル志向にもマッチし、ホームクリーニング可能で経済的ととても優秀なアイテムです。
しかも、ワンピースくらいのお値段でマイサイズに仕立てあがりますから、ふだん選ばないようなポップな色柄で冒険したり、雨の日や観光、旅行など汚れが気になるおでかけでも気兼ねなく袖を通せます。
いち利のお店、いち利モールどちらも色々なタイプの木綿をご用意し、コーディネートからお手入れまでていねいにご案内しております。
いよいよ木綿が真価を発揮する季節、貴女もどうぞその魅力を体感なさってみてくださいませ♪

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