2017年4月掲載

大切なお慶びの日のために…「礼装の常識」これだけは!


うららかな春の陽射しに、桜の花もまもなく咲きそろいそうですね。
先月は入卒式の装いというテーマでお話をさせていただきましたけれども、早速いち利に「この着物で行こうと思うんですよ」とわざわざお持ちくださる方もいらして、少しでもお役にたてたかしらとうれしく思いました。

そして、「こんどは結婚式のことも取り上げてほしい!」とお声をかけていただきました。
カジュアル化といわれる現代ですが、結婚式となればやはりルールにのっとり、年齢やお立場にふさわしい装いが求められます。特に40代を超えると、お招きする側になられたり、招かれる場合でもお立場が重くなったりして「きちんとした装いをしなくては…」と思うことも増えてくるものです。

昔は、決まりごとどおりのお式に招き招かれしているうち、自然と装いや振る舞いの常識を身に付けていきました。けれども最近は、「結婚式はこうするもの」という決まりが薄れ、会場から式のスタイルまで多様化して、経験値を積む機会が少ないのですよね。

迷うことも多いうえに、結婚式の着物なんてしきたりが多くて難しそう!と思われるかもしれません。
けれども、実は着物の礼装のルールは、洋装のドレスよりもずっとシンプルなんですよ。
洋装では、「時間」によってドレスの丈や肩を出すか出さないか、身に付けるアクセサリーまでが事細かに決められています。一方、着物でしたら昼でも夜でも、全く同じ装いでかまわないのです。
流行の変化も着物の方がずっとゆるやかですから、お嫁入りのときに仕立てた着物をずっと着まわすこともできます。

結婚式の第一礼装といえば「留袖」ですね。この頃はレンタルがより手軽になり、再び留袖が新郎新婦のお母様の一般的な装いとして見直されているようです。
留袖をきちんとお召しになっていれば間違いはないというのも、ある意味気楽なのかもしれません。
また、花嫁様が打掛の場合には、必然的にお母様も格の高い留袖となります。

留袖の装いで気をつけたいのは、小物まわりです。
留袖はお顔のそばには柄がなく真っ黒ですから地味に感じるかもしれませんが、刺繍衿や柄衿はNG。比翼が付いていますから伊達衿も使いません。礼装には必ず白半衿となり、帯揚も白か、わずかに金糸が入っている程度。帯〆は金、または白を合わせます。
長襦袢は、宝尽くしなどのおめでたい柄も良いのですが、今では「慶弔両用」で使える雲や紗綾形・流水・雪輪などの地模様のある白無垢を選ぶ方が多くなりました。この模様ですと、喪服時と兼用できますから便利ですよね。
また、お祝い事ですから必ず扇子をさしますが、これも黒い塗りの骨に地紙は金銀の儀礼用のもので、ふだん使いの扇子とは異なります。

いずれも、「留袖用のセット」として販売されていることが多いでしょう。喪服一式がセットになっていて他の機会には使わないように、留袖に合わせる小物も専用のセットと思っておかれると間違いがありません。
訪問着の格を上げてお召しになりたいときに、留袖用の帯〆帯揚、草履バッグを合わせることは可能です。逆に、カジュアルな結婚式だからといっても留袖に訪問着の小物を合わせることはしません。格下の小物を格上の着物に合わせるのはNGというのが基本になります。

ちなみに、留袖の柄は、新郎の母が格調高い柄、新婦の母はそれよりやや控えめに花柄など優しい雰囲気のものといわれます。どちらでも違和感のない無難な柄もたくさんありますが、レンタルなどでお柄に迷われたら、参考になさってみてください。

ご親族の女性は、新郎新婦の母よりも格上の装いにならないよう気をつけます。どのあたりのお身内までが留袖をお召しになるかは、地方によっても異なります。お母様だけ、お祖母様とご姉妹様まで、列席される既婚女性は全員留袖という地方もあって様々です。
留袖でない場合は、五つ紋、または三つ紋の色留袖、色無地、訪問着など。「平服」とある場合には訪問着から小紋までお召しになれます。

いずれにせよ、招かれる側でお召し物に迷われたら、主催の方におたずねになるのが一番です。カジュアルなお式であったとしても、お相手ありきであることに変わりはありません。その場に相応しい装いをすることがお招きくださった方に敬意を払うことになるのです。
訊くことはちっとも失礼ではありませんし、むしろお式を大切に考えてのことですから、たずねられた側も悪い気がなさることはないでしょう。

以前、雑誌「美しいキモノ」の中で木村孝先生が「きちんとした装いをすることが、その人の人格や知性を物語ることになる」と語っていらっしゃいました。
昨秋木村先生がお亡くなりになったときに、各雑誌で追悼特集が組まれ、私もこれまでの先生の記事を読み返したりいたしましたが、この言葉は本当にそのとおりだわ、と胸に残りました。

やっぱり「儀式」とは女性としての常識が試される場なのです。いざというとき、そして数少ない機会だからこそ女性としての知性、人格までもがみられてしまう。
窮屈で面倒に思われるかもしれませんが、「儀式」には決められたかたちがあり、そのとおりにしていれば失敗はないのですから、むしろ簡単かもしれません。

この基本のルールを知っておくことが、大人の女性としてのたしなみといえます。
そして、その場に相応しい着物をきちんと身にまとうことは、それだけで貴女の品格を物語り、お式の格までもが上がり、周りの方にも喜んでいただけると、いいことづくめなのですよ。

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